2009年7月北海道大雪山系のトムラウシ山で起きた夏山登山史上最悪の大量遭難事故の検証レポートの様な一冊。事故発生までを時系列に綴った第一章大量遭難も興味深いが事故の本質は第四章低体温症そして第五章運動生理学だろう。
『この遭難は悪天候を無視して前に進んだことに尽きるが、気象条件によっては低体温症になることを知らなかったことが主な原因である』
『低体温症の最も恐ろしい点は、意識レベルが下がるので自分の意思で防御する動作さえ出来なくなることにある』
『最も直接的な要因としては、遭難当日、かなりの寒さに加え、暴風にさらされたことによる体温の喪失、その風に逆らって歩き難い道を歩いたことによる体力の消耗、そして、そのような疲労困憊の後に、北沼分岐で吹きさらし状態で長い待機をしたことによる急速な身体の冷え、また、それらの悪条件に対抗するための衣服の不備やエネルギー補給の不足、などがあげられる。』
一気に読み終えた。そして付箋紙だらけになった。ザックに防寒着や食料が入っていても、思考低下で着る、食べるの行動が取れなくなる低体温症の恐怖。安全登山にこの理解は不可欠であろう。
購読日 2011年4月
おすすめ度 ★★★★★
トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか
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